運命の出会い
パソコンの操作を止めない圭の後ろに立ち、玲子が画面を覗き込むと、その画面の説明が始まる。
「玲子、この画面を見てみな。来週末の湘南の波はどこも最高だ。このプログラムは最新のAIテクノロジーを活用し、このあたりの波の状況を予測しているんだ。民間の気象情報会社のビッグデータをAIが分析し、波の種類と大きさを予測するのさ。
これは俺が自分のためだけに作ったプログラムだ。昨日このプログラムを走らせたら、今日は江ノ電の鎌倉高校前の沖に最高の波が起きると予測が出たんだ。それで早起きして、夜明け前からサーフィンをしていたのさ」
その説明を聞き、玲子が「何かよくわからないけどすごいのね」と言い、お願いをする。
「来週末の波の予測が最高なのでしょう。私、来週は絶対圭にサーフィンを教えてもらいたいのよ。ヨッサンの店の前の海も波は最高なのかどうか、お友達のAI君に聞いてもらえるかしら?」
圭は笑いながらパソコンを操作し、波の予測を伝える。
「そうだな、俺の友達のAI君の分析によると、今のところヨッサンの店の前の海も波が良さそうだ。南の海に台風が発生しそうだから、海に適度のうねりが入って、サーフィンに最高の波になりそうだよ」
その波予測を聞いて玲子が言う。
「圭のプログラムで、このあたりの波が来週最高と出ているなら、私はヨッサンの店に朝から行って待っているわ。このコーヒーとてもおいしかったわ。ごちそうさま」
玲子はコーヒーのお礼を言って帰っていった。
次の週、ヨッサンの店の前にある海の波は、サーフィンに最高のコンディションになる。圭と玲子は朝からサーフィンを楽しんで海から上がり、サーフボードを抱えてヨッサンの店までやってくる。玲子が濡れたショートの髪を後ろに結び直しながら言う。
「お友達のAI君の予測通り、最高の波だったわね。先にシャワーを浴びてきて。私がウエットスーツを洗っておくわ」
圭はウエットスーツを脱いで店の中に入っていく。玲子も自分のウエットスーツを脱いでホースを持ち、デッキの横にある洗い場で二人分を洗い始める。