そこに店の中で二人の様子を見ていたヨッサンがデッキに出てきて、ホースを手に持つ玲子に話しかける。

「玲子さん、店の中から二人を見ていたけど、楽しそうな玲子さんと圭を見ていると、自分が女房とつき合い始めた頃を思い出すよ。女房もよくそうやって俺のウエットスーツを洗ってくれたよ」

玲子はウエットスーツを洗いながら笑っている。

「圭とは一緒にいるだけで、何をしていても自分が素直になれてとても楽しいのよ。男の人と一緒にいて、こんなに楽しいのは生まれて初めてだわ」

そこに店の中から圭が出てきて、今度は玲子が店の中にシャワーを浴びるために入っていく。ヨッサンが圭に声をかける。

「玲子さんを最初に見た時、何か人を寄せ付けないとても冷たい感じがした。今は別人のように明るくなって楽しそうだよ。今の玲子さんが元々の玲子さんなのかもしれないな」

圭が真剣な目になってこたえる。

「ヨッサン、俺は生まれてから、玲子のような素敵な女性に出会ったことはないよ」

ヨッサンがびっくりした顔をする。

「圭が女性のことをそんなふうに言うのを初めて聞いたよ。惚れたな?」

しばらくして玲子がシャワーを浴び、ワンピース姿で店の中から出てくる。すると、圭がワンピースを着けた玲子をデッキの上に立たせ、波の壁を滑る時のフォームの形をとらせる。

そこで手の位置や腰の位置を細かくチェックしながら、玲子のフォームの細かい調整をしている。前の道を歩いている人が物珍しそうにその様子を見ても、二人だけの世界に没頭している。

その後も二人は圭の部屋で、またずっと楽しそうにサーフィンの話をして過ごし、陽が落ちた頃、玲子が立ち上がって「もう帰るわね」と言う。

圭も立ち上がり、玲子の両肩に優しく手を置いて目を見つめる。

「来週もまた玲子に会いたいな」

玲子も目を見て「私も会いたいわ」と返し、嬉しそうに帰っていった。その日から圭と玲子は毎週のように、ヨッサンの店の前の海で、仲良くサーフィンをするようになる。

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