Chapter2 商業施設士

商業施設士とは

本題に入る前に、より本作を理解してもらうために、まずは私の職業である商業施設士について説明したい。

そもそも商業施設とは、商店街やそれを構成する店舗、百貨店・ショッピングセンターなどの大規模店舗、飲食店、様々なサービス業の店舗、レジャーやレクリエーションなどの施設、美術館・博物館・劇場など文化的施設、ショールーム、展示施設など、日常生活に必要な社会的サービスを提供するすべての施設の総称である。

商業施設士は、そのような、人々が日常的に利用している、あらゆる商業施設の運営・管理システムや、店舗の構成・デザインなどを、総合的に計画して監理までを行う優れた専門家である。

楽しく安全な街、情報の行き交う賑わいのある街、そして地域の文化、歴史、風土などを活かした豊かで質の高い街づくりを具体化することを求められる社会で、大きな役割を担う重要な職業(資格)だ。

商業施設士設置の背景

昭和40年代、日本経済の高度成長に伴う商業の発展の中で、店舗など商業施設の改装需要が急速に増大し、それに関わる職能技術者も急速に増大した。

こうした商業施設に関わる急速な需要の増大は、トラブルの頻発などを理由に、社会的専門職能としての責任体制の確立が強く求められた。

一方、昭和47年大阪千日デパート火災、昭和48年熊本大洋デパート火災と大きな火災が発生したことで、当時の商業施設の在り方が大きな社会問題となり、専門的商業施設技術者の育成が必要であると行政からの関係職域への指導も深まった。

このような状況のもとに昭和48年5月、関係団体協議会の積極的な活動により、昭和49年4月、商業施設士資格制度が誕生した。「公益社団法人商業施設技術団体連合会認定資格」及び商業施設産業界14団体の推薦資格として、今に至っている。

どのようなところで活躍しているか

商業施設士は中央・地方の公的機関から、店舗設計を行うデザイン事務所や設計事務所、あるいはマーケティング・コンサルテーションを行うコンサルタント事務所などの個人事務所、建設会社、設計・施工会社、大手のディスプレー業、及びコンサルタント・カンパニーなどに勤務している方が多い。

中には販売促進に関わる広告代理店や商業施設を営む人たち、商業施設を誘致するデベロッパー、道路公団やJR関係者など多くの職場で活躍している。

また、企業や事務所で経験を積んだうえで独立して開業し、活躍している方、優れた知識と経験を活かして、指導的な活躍をしている方も数多い。