序章  新しい「ホスピタルフリー・サバイバル」

腫瘍内科を受診すると、まず医師はどんなことを説明するか

多くの場合、初めて診察室に入る患者さんと家族は、とても緊張しています。患者さんの表情やしぐさから、緊張の度合いや実際の体調を推測するのは腫瘍内科医にとって大切なことです。

続いて入ってくる家族の様子に注意を払う必要もあります。患者さんの治療には家族の協力が不可欠だからです。

これらの第一印象や紹介医からの「診療情報提供書」(今までの病気の経過や検査結果が書いてある手紙)や画像情報(内視鏡カメラ、CT[コンピュータライズド・トモグラフィー:コンピューター断層撮影]、

MRI[マグネティック・レゾナンス・イメージング:磁気共鳴画像診断]など)を踏まえて、病気や治療についてどのように・どこまで説明するかを腫瘍内科医は判断します。

初回の説明だけでは病気や治療への理解が不十分と思われる場合には、日を改めて説明します。私が説明をする時の内容とその順序は図1の例に示したものになります。

項目のⅠからⅧまで順に説明しながら、患者さんや家族の質問にも答えます。質問と答えの詳しい内容は、それぞれ後の章に対応したものになっています。私は、必ずこの内容を手書きした用紙を作成し、最後に患者さんに渡します。またこの用紙のコピーを電子カルテに取り込んでおきます。

「“治らないがん”と聞いた後の説明は、頭がまっしろになって覚えていない」という患者さんが説明内容を後で確認するために大切です。

この説明用紙はその後の治療経過を説明する場合にも有効で、これを見ながら、「以前にこのように説明しましたね。そして、その時から現在までの病気の変化をお話しします」というようにその後の治療経過の説明を続けていきます。