お嬢様の崩壊
そんなときに、今の夫を紹介された。
彼はなんの変哲もない普通の人だった。普通なところが気に入った。ラグビーをやっていてスポーツが好きなところに惹かれて、何度か野球やラグビーの試合を観に行ったりするうちに意気投合し、なんとなく結婚することになった。
銀行に勤めていて、やはり白いワイシャツしか着ない真面目な人だったが、自分の会社にいる派手な人たちに比べれば普通なところが安心できた。がっちりした体格も頼りになりそうで好感が持てた。
やっとずっと一緒にいたいと思える人に出会えたと思ったのだった。
結婚してから一年ほどで妊娠したので会社を辞めた。でも、結婚してしばらくしてバブルが崩壊すると夫の仕事が猛烈に忙しくなり、休みの日には疲れてずっと寝ていて出かけることもなく、子どもが生まれても、子どもの世話はほとんどしずかにまかせっぱなしになっていった。夫は子どもの可愛がり方がよくわからないようだった。
こんなつまらない人だったのかと思ったときにはもう遅かったのである。笑いのない家庭。子どもたちも父親にはあまりなつかなかった。
幼稚園ぐらいのころは、まだ運動会に参加したり、しきりにビデオを撮ったり、夏休みには海や山に連れていったりしたが、それも次第にしなくなった。