王子がハッサムの吊った手を見て「傷は如何だ?」と聞いて、ハッサムは少し吃驚して「大丈夫です、有難うございます」と返した。
王子と王女が頷くと直ぐカラムが「国王様から今朝再度王子様・王女様が早く帰国するようにとのご指示を頂きました」と話した。王子も王女も「分かった」「分かりました」と返事され、直ぐ王子が「私達を救って頂いた方は見つかったのか?」と尋ねられた。
カラムは「分かりました」と答えると一瞬二人共ぱっと明るい顔に変わり、「何処に今いらっしゃるのか?」と聞いた。
ハッサムはヨシムにお話しするように促し、ヨシムが「一時入院されていましたが既に退院され、英国四井物産で少しずつ仕事をされておられるようです」と伝えた。
カラムが其れを受けて「英国四井物産へは王子様のご意向を伺った上で直ぐ連絡をするつもりです」と述べた。
王子は王女と顔を見合わせた上で「国へ帰る事になったから急いで先方へ連絡を入れ伺いたいと伝えてくれ。近い筈だから此れから直ぐでも良いし、明日の夜には帰る事になるだろうから其れ迄必ずこの件を最優先に対応して下さい」と指示した。
カラムは「了解しました」と返事をすると「もう一つ報告が……」と言ってハッサムを促した。
王子は何だろう? という顔をしてハッサムを見た。ハッサムは「申し上げにくいのですが」と言って一瞬間をおいて、「今朝サドルが病院で亡くなりました」と伝えた。
王子は吃驚した顔をして、「え!!」と大きい声を出し、「どうして!?」と声が出て唖然とした顔で暫く黙り、「サドル……」と呟き右のこぶしを震わせながら目に涙が盛り上がりぽたぽたと膝の上に落ちた。隣で王女も泣いていた。
【前回の記事を読む】銃撃事件の犯人はアラブ系らしい…。そう告げると二人は驚愕した表情になった