第二章 ピカデリーホテル
ヨシムが「私達のテーブル脇で血に覆われて倒れていた男は亡くなりましたか?」と尋ねた。クリストファーが「いいえ、出血が多いように見えたかも知れませんが耳だったのでそれ程酷くなく、ボディガードの方が搬送された同じ病院で入院しています」
ヨシムが「重傷者は多いのですか?」と聞くと「重傷の方はお仲間の方とジャイルズのメンバー二人に、会場から逃げる時に倒れて大怪我をした方が八名程います」ヨシムが「犯人の目途は全くつかないのですか?」と聞くとクリストファーは「残念ながら未だ……」と苦しい顔をした。
ヨシムが「私達も関係機関を総動員して探しています、分かり次第必ずご連絡します」と言って席を辞そうとした。
その時クリストファーが「情報としては未だ確認中という事を前提にお聞き願いたいのですが、犯人はどうやらアラブ系の人間らしいと目撃情報を含め絞っています」と言った。
ヨシムとマサイは、「え!!」と声を洩らし、目を丸くして吃驚した顔をしながらお互いの顔を見つめ合っていた。
そして「分かりました、有難うございます」と言ってヨシムとマサイは立ち上がって挨拶し部屋を出た。二人に玄関まで送られ停めてあった車に乗り込んで帰って行った。
会議室に戻ったクリストファーがリックに「あの驚き方は本物だな! 王族に心当たりは無いという事か? 一体誰が仕掛けたんだろう?」と呟いた。
車に戻ったヨシムとマサイはアラブ人が犯人らしいと聞いて驚くと共に、大変な事になりそうだと直感した。ヨシムはサドルが入院している病院へ向かうように運転手に指示した。二人共黙って考え事をしていた。
病院へ着く前に花を買い、花束を二つ持って病院のホールへ入った。