第二章 ピカデリーホテル

ヨシムが警察で聞いたポイントを伝え、王子様・王女様を救った東洋人の素性が分かりましたと話すとホッとした顔をして「会ったのか?」と聞かれた。

ヨシムは、「いいえ!」と応え、「ショウ・カツとの名前で、既に退院され、今は毎朝傷の手当てに来られるとの事です。英国四井物産という商社にお勤めだそうで、先ずは報告してからと考え英国四井物産の方へは一切動いていません」と報告した。

カラムはそれで良いというような満足した顔をして、「此れからどのように王子様へ報告するかだな……」と呟いて腕を組み黙った。

少し間を置いてハッサムチーフが口を開き、「入院していたサドルが今日亡くなりました」と伝えた。カラムは「そうか……」と言って又腕を組んで黙っていた。

そして「とうとう亡くなったか!」と言い、ハッサムに「サドルの家族は?」と尋ねた。

ハッサムは「未だ独身です」と答えた。カラムは丁寧にサドルを引き取り直ぐ帰国させなさい。そして全ての手続きについて病院への感謝も含め恥ずかしくない対応をするように指示した。

その上でハッサムへ「今朝国王から直ぐに王子様と王女様を帰国させるように指示を頂いた。実は日曜日にも国王から直ぐ帰国させるように指示が有ったが、お二人の体調が落ち着いてからにさせて頂きたいと説明しご了解を得ていた。が、又今朝頂いた。未だ王子様にはお話ししていないので後で本件も含めお時間を頂こう」と三人の顔を見ながら話した。

ハッサムは「ではご指示をお待ちしています」と言って三人はカラムの部屋から退出した。