王族の軍服を着ている二人が出入口に立って此方を見ているガードマンに近寄ると「私達の入院している仲間を見舞いに行くのですが、仲間と一緒にいて耳を怪我し入院した方も一緒にお見舞いしたいと思い花を持参しました。病室を教えて頂けますか?」と丁寧に尋ねた。

ガードマンはお互い制服で親しみを感じ、入院している王族ボディガードの仲間と分かったので、「二階に重傷で無い方は七~八人寝ていますから其方へ行って、入口でナースに聞いて下さい」と階段を示した。

二人は階段を上がり病室のドアを開けると綺麗なナースが座って振り向き二人の制服を見て吃驚したが、ガードマンと同じように丁寧に耳の方の話をすると「その方はもう退院され、昼は会社で仕事をなさって毎朝パッドの交換だけで見えます」と答えた。

ヨシムは少し吃驚し、「其れでは折角ですから会社の方へ伺い、この花をお届けしたいのですが会社名を教えて頂く訳にはまいりませんか?」と聞いて、私はこういう者ですと王族の刻印の入ったボディガード身分証明書を提示した。

ナースはこれを見て横に有ったリストを調べ「英国四井物産・ショウ・カツ」と伝えた。ヨシムは心からお礼を言って部屋を出るとそのまま上の集中治療室に入っているサドルの様子を見るためにエレヴェーターに乗った。

エレヴェーターを降りると集中治療室フロアは騒然としていて、特にサドルのベッドの周りには看護師と医師が集まっていた。

二人がサドルのベッドへ進んで行くとヨシムの制服を見て疲れた表情の医師が、「先程心臓が止まり強心剤を打ちマッサージをしたのですが残念ながら……余りにも血を失い過ぎです!!」と医師が呟いた、又「残念です!!」と言って退き、スペースを空けた。