突如「海」が現れた。しかし、それは「湖」だった。ロッキー山脈の街「ソルトレークシティー」に着いた。ここは、旅行者にとっては東西南北に分かれる中継地と言われ、旅行者が憩う安住の地といわれる。この地から東はデンヴァーへ、西はリノからサンフランシスコへ、南はラスヴェガスを経てロサンジェルスへ、北はイエローストーンへといった具合だ。

 

「ここに住みたい!」

と思う間もなく、一時間の休憩の後、さらに西へと向かった。

リノからサクラメント、そしてカリフォルニア州サンフランシスコに入った。ついに「本当の海」を見た。日本にいたときの太平洋と同じ太平洋。しかし、反対側からの太平洋はまた感無量だった。シカゴからはるばるバスで三日後、ついに横断した。サンフランシスコはきれいな街なみで、おしゃれな家が所狭しと並んでいた。しかし、異様に坂が多かった。坂が多いぶん、景色は最高だった。どこから見ても、ゴールデンゲートブリッジやアルカトラズ島は絶景だった。

「遠くで見るよりも近くで見たほうがもっといい。」

と後ろの誰かが言っていたので、実際に行ってみたが、

「遠くから見たほうがいい」

と思った。この遠景を観ながら、詩人室生犀星の詩を思い出した。

「ふるさとは遠きにありて思ふもの」

よいものは、近くにあるときよりも、遠くにあったときのほうが素晴らしいのではないかと感じたのだった。

 

 

【前回の記事を読む】【コンテスト大賞特集】「思っていることとやっていることが違いすぎる…」アメリカひとり旅で考えたこととは

次回更新は6月23日(日)、11時の予定です。

 

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