三 アメリカひとり旅
ニューヨークのバスターミナルのチケット売り場で休んでいると、目の前に別の黒人の家族がいて、何気なしに夫婦の会話が耳に入ってきた。
「俺たちは黒人なんだ。どうしたって、それは変えられないんだ。それを受け入れなくちゃならないんだ。」
と父親のほうが母親に言っていた。なぜその父親は、そんなことを言っていたのかはわからなかったが、妙にその会話が、いつまでも心に残った。
ニューヨークは、ニューヨーク州のことではなく、ニューヨーク・シティの街のことで、最初混同していた。この街から市バスで約一時間乗ると、知人の家があった。ニュージャージー州モントクレアにあるメレディス家だった。大学二回生のときにホームステイをした家だった。
これまでに三~四回ほど遊びに行ったことがあったが、今回は突然行ったので、ご夫婦は不在だったが、息子さんがいた。彼に事情を説明し、少しの間休ませてもらって家を出た。最初のうち、彼は、ビックリした顔をしていた。何の連絡も無く、突然来たこの男は、
「一体誰なんだ!」
という顔をしていた。玄関前の広場で話をしながら、その息子さんは少しずつ思い出したようだった。
再びニューヨークに戻り、バスでクリーブランドに行き、イリノイ州シカゴへと旅を続けた。シカゴも「でかい街」だった。何がでかいのかというと、建物が半端なくでかい。プルデンシャルビル、シカゴ美術館、そしてシアーズタワー。行って中を見学してみたいところがたくさんあったが、ただ歩いて終わった。