ワルツさん、空を高く飛ぶ鳥はもう帰ってこないよ。
僕は、僕をリュシアンと呼ぶワルツさんの声が懐かしくてたまらない。
いい名前だ、ブラック・リュシアンだなんて。
本当は気に入っていた。
ワルツさんと一緒に過ごした毎日は、そりゃああくびが出るほど退屈だったけど、ワルツさんが変な人で本当によかったと思う。
僕はワルツさんのこと、大好きだったよ。
ワルツさんが字が読めない人だってわかった時、僕はワルツさんのことが本当の神様みたいに思えた。
なぜだか、そう思えたんだ。
だから、もう僕は行かなくちゃならない。
神様のそばに、僕はいられないから。
僕はゆっくり立ち上がった。
さあ、行くぞ、リュシアン。
「囁き森」の方角へ僕は駆け出した。