第三章 京都で剣士になる

車窓を流れる景色も夏の光に暑さが霞んで見える。さすがに新幹線の中は冷房が効いていて心地よいが、ここ数日の慌ただしさで疲れもピークの私は座席に沈み込んでいる。

「洋子、水野君の隣に座ってきたら」

何を言い出すんだ、ふーちゃんは。

ここは京都に向かう新幹線の中、思いのほか空いている自由席で、友達が勝手な事を言い合っている。

思い返せばあの日、ボケタマが口を滑らせてからの、怒濤の十日余り。

まず、裕子達に京都に行く事を知った致嗣が御所に興味があるので同行したいと言ってきたと話し、致嗣のお父さんからも、一人で行かせるより大勢で行った方が安全だから、女子だけのところ、すまないが、お願いできないかと頼まれた事を話したら、何か弱みを握られた脅し説。

曰くありげな占い説。

挙げ句、皆には秘していたが、兄を仲立ちにしての恋バナ説で落ち着き、皆から片頬を緩ませての了解を得た。

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