第三章 京都で剣士になる
私達はいい加減花火を堪能した後、夕食が待っているので帰ることに。
乱れていた浴衣もおおよそ直し、淑(しと)やかに歩く道すがら、友とふーちゃん、裕子までさっきの事を思い出し、殿に話し掛け質問攻め。
「水野君ってテニス部よね。なのに凄かった。剣道ってか護身術みたいなもの習っているとか」と友が言えば、
「水野君、格好良かったよ! 学校ではそれ程、あっ失礼。えぇーとですね、目立っている訳ではないのに」とふーちゃんが言い、
「水野君のお父さんは郷土史研究家だから、武家時代の剣術なんかも研究されていて、それを息子に教えているとか」
と裕子まで推察したことを聞いている。
そしてそんな三人が殿を見ながら揃って、
「水野君本当に素敵だった~」と叫ぶ。
全く本当に殿は武士だったんだと、今更ながら思っていると、裕子が私に言ってくる。
「洋子も何か言いなさいよ。それとも何、そんな事は前から知ってますよってかぁー」
「いや知らないわよ、本当に。でも凄かったし、強かったね」と私もしみじみ言うと、
「何を申すか洋子まで、知らない土地に来て少し過剰に出てしまったことを省みていると言うのに」と殿は反省している様子。
「ノ、ノー!! 省みるって反省の事よね。必要ない、何時の時代も婦女子を守るのは心優しい剣士でなければ」と裕子。
「でも、そんな控えめなところも素敵」とふーちゃんがうっとりとしながら言う。
「とにかく、お腹空いたから水野君の賞賛は夕飯食べながらしようよ」と友が言う。
それからと前置きして、「さっき何気に洋子と呼び捨てていたよね」と聞いてくる。
「ええぇーそうだっけ、気が付かなかった」
ととぼける私、幸いにも友以外は気に留めていないので、切り返し「それより御飯だよ、お腹空いた~」と続けた……
本当に友は冷静で耳ざといんだから。
私は気を落ち着かせてから、脳内会話でタマの様子を聞いてみる。
(タマ、殿の事、心配だったでしょ)
(俺は別に。殿を信頼申し上げているから、別段心配はしておらなかった)
(ええっ、またまたぁ、そうだっけ、何だかバスケットの中で心配のあまり暴れていたような気がしたけど)
(思い過ごしだ!!)
(はいはい、わかりましたよ。大声出さないで。頭に響くよ。じゃ私が心配していたと言うことにしておこう。まっタマも安心してお腹空いただろうから、帰りに宿の近くに八百屋があったから、京野菜のなすびとトマト買ってあげるね)