第一章 不思議な出会いからの始まり
なすびは旨いのだろうか。それとも、うちの畑の物は特別なのか。猫が食べている。夜、菓子を買いにコンビニに行った折、何気なく見た畑の奥で月明かりの中、食べていたのである、なすびを猫が。ちょっと怖かったので、そのままコンビニに向かった。帰りに見たときは、もう居なかった。だがとっても気になったので朝見に行こうと決めて寝た。
早朝、気味が悪かったが怖い物見たさで、なすびを見に行ってきた。普通のなすびだった。だったら猫が特別なのか? ベジタリアンの猫! ベジタリアンの人間がいるのだから同じ哺乳類、あり得る話のような気がしないでもないのである。
しかし、主に肉食、もしくは雑食の動物が自分の嗜好を優先し欲求を自制心によって制御することなどは、ある程度知能が高くなければ出来ないはず。脳の大きさでは頭の良さは測れないと言うけれど、猫と人間とでは格段の大きさの違いがあるはず。なので、欲求の赴くままに雑食のはず。
草を食んでいるのは見たことがあるが、なすびを抱え込んで食べているなんて、そんな猫は未だかつて見たことがない。ならば、あの猫は何だ。私の見間違いか、でも闇夜じゃなく月夜だったし、寝起きじゃなかったし。宇宙人か? いやいやあり得ないし、すぐに結果を求める私の短絡的な判断は危ない。
昔から夢想家の私は夢と現実が一緒になるようなことはなかったが、シルバーメタリックの宇宙人が突然部屋に現れる夢を見たり、雲を見ていて謎の気流が現れて体を浮かせてしまう、なんて想像をしてみたりする。他には鎮守の森には妖精のような小人が住んでいるんじゃないかと想ってみたりする。人には危ない奴と想われないためにそんな事は話したことがない。
私は十五歳、水野洋子。高校推薦もほぼ決まり、親の期待もない分お気楽だ。昔から母が病がちのせいで家には友達を呼ばない、遊びに行っても心配を掛けないように早く帰るようにしている。他に市役所勤めの父と元気な祖母、工場勤めをしている兄との五人暮らしだ。家族のことをもう少し言うなら。