「昭ちゃんと二人からだからね。ヒロ君は勉強ができるから、本もたくさん読むといいよ。またカードはあげるからね」と言い方がお母さんみたいだった。

お祖父ちゃんとおばあちゃんから由美はキティちゃんのポーチをもらい、僕はセーターをもらった。

「こんな豪華なクリスマス初めてだねえ」

由美が僕に向かって言うと、お祖父ちゃんが「来年はもっとだぞー」と由美の顔をのぞき込んで喜ばせた。家の中が華やかで、小さい頃の浮き立つような感情が出てきて抑えるのにちょっと困った。

千恵姉ちゃんは夜のアルバイトに行かないで正月の準備を始めた。会社の帰りに毎日買い物を抱えて帰ってきた。みんなの下着やご飯茶碗(ぢやわん)、箸や黒いお椀(わん)、お重箱を抱えて帰ってきた日もあった。

「今日は何買ってきたのー?」が由美の「お帰りー」の次の言葉になった。つい僕もつられてお姉ちゃんの買い物をのぞき込む。だんだん正月気分が高まってきた。

お姉ちゃんは「一度アメ横で値切りながら買い物をしたかったんだ」と言って、三十日には僕たちと昭二兄ちゃんを連れてアメ横まで買い出しに行った。

すごい混雑の中で、お姉ちゃんが張り切って、持って行った発泡スチロールの箱に入りきらない買い物をしてくたくたに疲れて帰ってきた。

家にはお祖父ちゃんが鮪(まぐろ)の塊と、鯛(たい)を丸ごと一匹お店から持ってきて待っていた。おばあちゃんとお姉ちゃんは台所で煮物を作り、お祖父ちゃんはおせち料理の手伝いで、昭二兄ちゃんは大掃除担当で僕たちはお兄ちゃんの部下になって働いた。

晩ご飯で一区切りつけて、明日やることを言い合った。お祖父ちゃんがぽつんと「ちゃんとした正月をするのは久しぶりだな」と言ったとたんに「そうだ餅を切らないと固くて切れなくなっちまう」と言い出して、由美とお祖父ちゃんがにぎやかにお餅を切った。

由美が言い出して実現した誕生会から、僕はお姉ちゃんたちに気遣われて、いろんなことをしてもらってきたことに引け目を感じなくなった。

僕が家族と一緒にクリスマスやお正月の支度を進んでやればいいとか、家族が喜ぶことを僕がやればいいとわかってきた。

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