第一章 新しい家族

吹奏楽部

家に帰り着いたらお祖父ちゃんが来ていて、「暗くなったら服しか見えないぞ」と僕たちがすごく日焼けしたと大げさに驚いた。

翌日、僕と由美は午前中ベッドでごろごろして、お祖父ちゃんもお店が夏休みだから家にいた。昭二兄ちゃんと千恵姉ちゃんは二人で友達の所に行くと言って、沖縄のお土産を持って出かけていった。二人だけで出かけるのはすごく珍しい。

夕方になって僕と由美、お祖父ちゃんとおばあちゃんの四人で焼き肉屋さんに晩ご飯を食べに行った。お祖父ちゃんたちと四人だけで出かけるのも焼き肉屋さんも初めてだった。

お祖父ちゃんはビールを飲んでとても機嫌がよく、由美は沖縄のことばかりをしゃべっていた。

「お兄ちゃん、今年の夏休みはすごい楽しいことばっかりだね」

帰り道おばあちゃんに合わせてゆっくり歩きながら由美が話しかけた。

「うん」と答えたけど、僕には千恵姉ちゃんやお祖父ちゃんたちが、事故のことを思い出さないように考えてくれているんだとわかっていた。

去年の夏も、引っ越ししてから、何度も千恵姉ちゃんや昭二兄ちゃんがあちこちへ遊びに連れ出してくれた。友達が遊びに来なくなっていたから、引っ越し荷物の整理が終わって、何をしていいかわからなくなっていた頃で、人混みの暑い街を歩き、由美は千恵姉ちゃんにまとわりついた。

でも千恵姉ちゃんに話しかけられても僕は俯き加減で歩いていることが多かったと思う。今年の夏はみんなが笑っているときは、僕も同じように楽しかった。

事故の前に早く帰ろうと言わなかった後悔は、一生懸命僕たちが不自由なく暮らせるように、明るく楽しく過ごせるように考えてくれる千恵姉ちゃんたちの前では口にしてはいけない。そう自分が努力したというよりも、千恵姉ちゃんたちと暮らしているうちに自然とそう思うようになっていた。