第一章 新しい家族

家 族

由美が僕たちの部屋に走り込んで、隠しておいたプレゼントとカードをお姉ちゃんとお祖父ちゃんに渡した。二人とも嬉しそうで少し照れていた。カードには僕が先に書いたから由美がなんと書いたか知らない。

お祖父ちゃんには体に気を付けてというようなことを書いて、お姉ちゃんには「僕たちを引き取ってくれてありがとう。これからもよろしくお願いします」と書いた。

機嫌よくしゃべっていたお祖父ちゃんはプレゼントの赤いバンダナを喜んで頭に着けてから、眼鏡を出してカードと肩たたき券を読むと黙っちゃった。お姉ちゃんも包みからエプロンを出して着けて見せた。

それからほっぺたを少し赤くしてじっとカードとお手伝い券を見つめたあと、黙ってたたんだ。お兄ちゃんがお姉ちゃんからカードを取り上げて読もうとしたら、お姉ちゃんは唇の形だけで「だめ」と言って渡さなかった。二人が喜んでくれていることがよくわかった。

由美の「では、お兄ちゃんからのプレゼントでーす」で、僕は音が大きすぎるからと断って、僕たちの部屋の中から戸を開けて、みんなの方に向かって吹き始めた。

DVDで見たうねるような北海道の大地に広がる畑の光景を思い浮かべながら、できるだけ澄んだ音が出るように注意して、テンポを落として吹いた。

部屋の壁にガンガン響いてうるさすぎたかもしれなかったけど、間違えずに吹き終えてみんなに拍手された。千恵姉ちゃんは目に涙を浮かべて「すごーい」とつぶやいた。

お祖父ちゃんが由美に「もういいか?」と許可をもらってやっと乾杯になった。「こんなにいい誕生日は六十七年間で初めてだ」と笑ってコップを置いた。「ヒロのラッパは大したもんだ。また聴かせてもらおう」

お祖父ちゃんがしみじみと言った。由美は「ラッパじゃないよトランペットっていうんだよ」と教え、またみんなで笑った。誰かが何を言ってもみんな笑顔になった。

誕生会はお祖父ちゃんたちに初めてしてあげられたことで、僕は不思議なくらいに楽しかった。

クリスマスが近づいて、部屋に電子ピアノが届いた。千恵姉ちゃんから由美へのプレゼントだ。

前から言われていたらしく、「お兄ちゃんがトランペットを買ってもらったときに、お姉ちゃんがクリスマスには電子ピアノを買ってあげるからって約束してくれたんだあ」由美は電子ピアノにしがみついて喜んでいた。

イヴの日にはお祖父ちゃんもいて、クリスマスケーキと鶏(とり)の丸焼きが真ん中にあった。ソーセージの盛り合わせと大きなサラダボウルが並び、由美が昭二兄ちゃんにとんがり帽子を全員分とモールを買わせて壁に貼り付けた。

千恵姉ちゃんから、誕生日のお祝いとクリスマスプレゼントを合わせて携帯電話と五千円の図書カードをもらった。