4 将来役立つ基礎医学

① 基礎医学の授業

教養課程を終えて、医学専門の教育を受けるようになります。

いよいよ医学の学習がはじまるのか、と感慨に浸れるものです。ここでの専門の学習は、その後の医師としての実践の基本となるものであり、極めて重要です。

基礎医学では解剖学、生理学、生化学、薬理学、免疫学、病理学など、かなり基礎的な分野を学びます。これらの学問は、臨床医としての実践には関係なさそうに思えるかもしれません。

でも解剖学の一つをとっても、臨床医学に関連するものが多く含まれます。他方教授によっては、基礎的な学習は個人に任せるとして、最先端の学問の話をされる方もおられます。

医学部生の若いころから、このような最先端の話題を提供していただけるのは、大変幸せだと感じます。もちろん基礎医学としての基本となる知識の習得は必須です。講義で不足している箇所は、自分で積極的に学んでいく姿勢は大切です。

今でも忘れられない講義をいくつか紹介しましょう。

生化学ではノーベル賞受賞候補となっていた著名な教授が、担当されたことがあります。もちろん前半は必要なことを、要領よく授業されました。でも後半では、これは試験には関係ない、としながら、最先端の研究分野の話を、分かりやすくしてくださいました。

医学部生として、研究の面白さと大切さを垣間見ることができました。ワクワクして聴き、必死でメモしました。半世紀も前のことになりますが、そこで語ってくださった事柄は、今でも鮮明に記憶に残っているほどです。

また解剖学では、すでに大学の総長になられた著名な先生が、ご多忙にもかかわらず学生講義を担当されました。世界的な解剖学の研究者を紹介して、その研究内容を分かりやすく紹介されていたことが記憶に残っています。

生理学の先生は、ごく最初の頃は、基本的な講義をされていました。でも次第に専門の話をされ始めました。内容は面白いのですが、難解な内容も多く、次第についていけなくなる学生も増えて、出席者が減っていきます。

私も最後の15~16人くらいまでは、教室で皆と必死で聴いていましたが、とうとう退屈して授業から抜けました。後で聞いたところでは、出席者が10名足らずになった時点で、先生がこの人数なら講堂ではなくて教授室で講義しよう、と言われたそうです。

教授室で気楽に話題を披露して下さり、大変面白かったとのことでした。(私もその時点まで残って聴いていれば、少人数で楽しい勉強ができたのに、と悔やまれました)

出席の厳しい現代では考えられないことでしょう。

【前回の記事を読む】医療技術がいかに進歩しようとも、決して変わることのない大切な点とは

 

【イチオシ記事】我が子を虐待してしまった母親の悲痛な境遇。看護学生が助産師を志した理由とは

【注目記事】あの日、同じように妻を抱きしめていたのなら…。泣いている義姉をソファーに横たえ、そして…