このような状況は「誰しも突然訪れる」ことが非常に多いのです。つまり、「その時点での身体的状況を想定し、その状況や自分の希望に沿った老人ホームを予め想定しておく」ことは、実質不可能であるということなのです。
中には、ご自身がお元気な内に将来の参考として老人ホームを見学する方もいらっしゃいますが、これも見学の意味が薄くなる可能性があります。
これは、見学時点で差し迫った状況になく、お元気な状況での老人ホームへの視点と、実際にその状況に置かれた場合とは違うということです。
つまり、医療依存度や身体的状況により、想定していた老人ホームでの生活をその通り送ることは難しくなるでしょう。
一般的に、老人ホームを探す時には、追い詰められたような状況、かつ限られた時間の中で、自分の親の身体的状況にマッチした老人ホームを探し出さなければなりません。
ましてや介護サービスや老人ホームの利用を判断するにあたっての有用かつ分かりやすい情報が十分であるともいえないのです。
これは、介護保険制度の歴史が比較的浅く、また老人ホームについても様々な類型があり、何を基準に優劣や判断をすれば良いのかが、非常に分かりにくいことも要因でしょう。
確かに介護サービスの利用であれば行政やケアマネージャー、老人ホームの選択であれば紹介会社等もあるでしょう。
しかし、想定入居者の希望や状況を全て把握し、かつこれに合致した老人ホームの情報を数多く持ち合わせ、的確にマッチングすることは難しいのです。
この「介護の安心、運営の質」、つまり「中身」が大切であることは、ある意味当然のことであるとも思えます。
しかし、自分の親の身体的状況を勘案し、老人ホームを真剣に探そうとすればするほど、「限られた時間内で、大量の情報から有用な情報を選別し判断していくこと」は、まさに砂の粒の中からダイヤモンドの粒を探し出すくらい困難なのです。
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