②電力会社の料金決定における株主利益の確保の憲法上の要請

電力事業の担い手はいろいろなものがあるようであるが、株主により所有される電力会社にあっては、電力事業の公共性は、規制等により株主に対する私有財産権の侵害ともなりうるが、そうだとすると憲法上株主に対して財産権を制約することの対価として適切な補償をなさねばならず、それが電力の認可料金の中で考慮されてきたようである。

米国の最高裁判所は、1898年から1944年まで憲法上のテイキングスの問題(takings clause)として料金決定の審査を行ってきたが、1944年のHope判決以降1987年までの間には、テイキングスの問題として憲法違反があると判決をしたものはなかったという(Richard Pierce, Public Utility Regulatory Takings:Should the Judiciary Attempt to police the Political Institutions? 77 Georgetown L. Rev. 2031〈1989年〉)。

つまり、わが国の憲法でも国民の私有財産権を認めているが、国はこれに制限を求めるときは、その財産権に対して補償をしなければならないという問題である。その補償額を料金決定においてどのように決めるのかが問題となる。

裁判所は、公益料金の決定が「公正価額」(fair value)に基づかなければならないと判示してきたし、当初の建設費用、社債および株式の市場価額、当初の建設費用と比較した現在の価額、法規定による特定料金の下で得られる財産の収益力等を考慮してケースごとに公正(just and right)でなければならないと判示していた(Smith v. Ames, 169 U.S. 466, 546〈1898年〉)。