おじいちゃんとの外出は、おかあさんは、いつもオーケーしてくれる。

電車に乗って出かけた。新宿駅で降りると、大勢の人がかけあしのように速く歩いていた。

だれかにぶつかりそうで怖かったけど、おじいちゃんは、波奈と手をつないでスイスイと歩いた。まるで、森の中の木をじょうずによけて歩いているみたいだ。

駅前のデパートに入った。二人はエレベーターに乗って、八階で降りた。

「波奈ちゃん、ゆかを見てごらん」

きれいなクリーム色のゆかだった。

「うずまきみたいなもよう?」

「そう。アンモナイトの化石。大昔の海で泳いでいた生き物だよ。南のあたたかい海でね」

階段近くの通路の壁には、もっと大きなアンモナイトの化石があった。長イスに座って、おじいちゃんはリュックサックの中から、青色のメガネを二個取り出した。

「これが新しい発明品だよ。このメガネをかけて、アンモナイトの化石を見てごらん」

二人で、青色のメガネをかけた。するとあたりが、しんとして急に青くなった。

目の前には、大きなカタツムリのようなカラで、イカのような足のアンモナイトが泳いでいた。

波奈もおじいちゃんも、水の中を泳いでいた。不思議なことに、ちっとも苦しくなく、話もできた。

「すごいね、おじいちゃん」

おじいちゃんは、得意そうに胸をそらせた。

 

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