「すごいね!」
波奈が、うれしそうに言うと、「本当なの?」と、おかあさんは首をかしげた。
「おっほん!」
鼻の上にちょこんとのせた小さな丸いメガネを、右手で少し上にずらして、おじいちゃんは得意そうに胸をそらせた。後ろにひっくり返ってしまいそうなほど。
「今日は用があるから、もう帰るよ。夜、寝るときに試してごらん」
おじいちゃんは忙しそうに、バタバタと帰っていった。
その日の夜、波奈はふとんに入る前に銀色のお皿をまくらもとに置いた。お皿の上にイソップ物語の絵本をのせ、緑色のメガネもかけた。
翌日の朝。おかあさんの声で、波奈は目を覚ました。
銀色のお皿の上には、イソップ物語の絵本が、ちゃんとのっていた。でも、夢さえ見なかった。
「おかあさん、おはよう」
「波奈ちゃん、おはよう」
「おじいちゃんの発明したメガネをかけて寝たけど、夢も見なかったよ」
「そう。また、失敗したのね」
この失敗のため、おじいちゃんはしばらく元気がなかった。でも、波奈は少しも心配しなかった。一週間もすれば、すぐに元気になるのだ。
次の土曜日、またおじいちゃんから電話があった。
「波奈ちゃん! すごい発明をしたよ」
電話から、おじいちゃんの明るい元気な声が、聞こえてきた。
「今日、お出かけして、試そうよ」
「おかあさんに聞いてみるね」