ネムとジド
そこで指に乳をつけてさしだすと、ぺろぺろとなめ、そのうちに、皿に頭をぶつけながら、なめだした。なめおわると、いねむりをはじめた。
おしりがぬれて、水のようなうんちがでている。指でぬぐうと、母犬になめてもらったように、安心しきってねてしまった。
ネムは子犬をだいて、ペチカ(暖炉)のわきの、ワラぶとんをしいた小さなベッドにいって、よこになった。
夕方かえってきた、母さんのミレンカは、ネムをみておどろいた。いつもは、たいてい部屋のすみでうずくまっているか、そうでなければ、トリ小屋のまえで眠っているのが、今日はベッドでねているのだ。
おまけに、よごれた、ちっちゃな子犬をだいて、ほほえみさえうかべている。こんなにうれしそうな息子のすがたは、近所の子どもたちが学校に通うようになってからは、みたことがなかった。
「かわいいねえ」
母さんは、ネムと子犬をみながら、ほほ笑んだ。
そのとき、父さんのドーブルがかえってきた。父さんは、ネムと子犬をかわるがわるみていたが、やがて首をふって、小声でいった。
「かわいいけどなあ、やっぱり、うちじゃ飼えないよ。かわいそうだけど、ねているうちに、すててこよう」
そういって、指でつまみあげると、子犬はおどろいてキャンキャンと鳴いた。