「水質の測定は、この町に得意な人がいる。水道局の原田局長だ。分析のレクチャーをしてもらえるように頼んでみよう」

「よろしくお願いします!」三人は、勢いよく一斉に頭を下げた。

分析には分析するためのサンプルが必要だ。大河は早速一斉メールで、水産科の三年生、四年生にサンプリングチームへの参加を呼びかけた。

次の日には、電気伝導度を測定したニシベツ川の七つの流域でサンプリングが行われ、七つの分析用サンプルがそろった。

その次の日、水道局の原田局長が水産実習室を訪れた。今は鳥類標識調査のシーズンであるから、毎日のように科学部OBとしてニシベツ実業高校に来ている。

「いつもは、科学部の活動で鳥類標識調査の網場には来ているんだが……」

「水産実習室は初めてだな」

「ところで、吸光光度計はあるかい?」

原田の問いかけに、川原が答える。

「ええあります。富阪先生から使用の許可をもらっています」

「それでは、さっそく硝酸態窒素から分析してみよう」

原田はそう言うと、試験管や試験管立、ピペットを準備するように大河たちに頼んだ。

原田は、硝酸態窒素の一○○○mg/Lの標準液を持ってきていた。これを、ピペットを使って○、一、五、一〇mg/Lになるように蒸留水で薄めた試験管を四本作った。この中に、硝酸態窒素と反応すると赤紫に発色する試薬を入れた。

五分ほどすると、それぞれ濃さの違う赤紫の色水となった。○mg/Lは透明、一〇mg/Lは最も濃い赤紫である。

「この試薬を入れると、川の水に硝酸態窒素がどれぐらいあるか、判断できそうですね」

川原は試験管をじっと見つめて言う。その姿を見て原田は、

「そう。そして吸光光度計を使うと、正確に測定ができる。さっそく薄めた標準液を測ってみよう。結果を黒板に書いてくれるか」と言った。

原田は、ガラス製のセルに○mg/Lの薄めた標準液を移す。吸光光度計にセットするとメーターを「○」に合わせた。

「よし、○mg/Lは『○』だ。黒板にメモしてくれ」

そう言うと原田は、一、五、一〇mg/Lに薄めた標準液を次々に測定し、黒板にメモをさせていった。

  

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