それで、問題は真琴の相談事である。
あずみ本人は家庭内の揉め事の相談者に適しているとは決して思わない。ましてや、真琴のお兄さんにも会ったことがない。
そんな揉め事に対して、なぜ真琴があずみを頼ってくるのか―?
あずみは嫌な予感がした。
真琴の相談事というのが、あずみ本人ではなく、刑事の義兄を頼ったものではないかと思ったのだ。真琴は案外そういうむちゃぶりをやってのける。というか、身近に刑事がいると聞くと、すぐにでも相談に乗ってくれると思ってしまう性格だ。
この予感は当たっている気がする……。
あずみは、無事進級した初日くらい、事件とか事故とか生臭い話題とはあまり関係なく、普通の学生として過ごしたいと思った。
しかも今日は、新たに進級した学生を集めて、専門分野を高めるための講義や実習についての説明会があるらしい。その上で、各自が履修したい選択科目を選ぶのだ。
真琴も同じ看護学部に通う学生だが、将来は保健室の先生になりたいという。それで、養護教諭養成過程を専攻するつもりだと言っていた。あずみは附属の大学病院で働きたいという漠然とした希望を持っている。
今、あずみは、真琴の相談事に思いを馳せている余裕はないはずだ。
とりあえず真琴の話まであと半日ある。気持ちを切り替えて、説明会が実施される講堂へと向かった―。