第一章 留学の夢

二度目の短期留学

自分だけ正しい道を行って、今回の目的は何だったの?

通り過ぎてゆく彼の表情が、一瞬勝ち誇っているかのように見えたのはなぜなのだろうとしばらく考えてしまいました。

日本のそれと比べてアメリカのフリーウェイの圧倒的に便利なところは、ほとんどがただであることと、出入り口が概ね、数百メートルおきにあるということです。

日本の高速道路の場合、出口を一つ間違えると、十数キロも進まなければ次の出口が無い場合が多いので、ひたすら目的地が遠のいていくストレスにじっと耐えながらハンドルを握っていなければなりませんが、カリフォルニアのフリーウェイの場合は、間違えても数百メートル行くと次の出入り口があるため、すぐにリカバリーができます。

この時私は、すぐに次の入り口から本線に戻ろうとしたのですが、何せ不慣れでどこに入り口があるか分からなかったため、結局カーナビを頼りにホテルに帰りました。

すると、なんと富田さんがもうすでに先に帰ってきていたのです。

私は、あの勝ち誇ったような顔の真意を確かめたかったのをじっと我慢して、結局間違えた場所から続きをやろうということになりました。

再度フリーウェイに向かい、今度は順調に走り、目的地が間もなくというところに来た時でした。

後ろからついてきているであろう富田さんの車をサイドミラーで確認した瞬間信じられないことが起こったのです。

富田さんの車の後ろから来ていた別の車が、いきなり彼の車に衝突して乗り上げ、普段は見ることのない、車の腹(真下の部分)が思いっきりサイドミラーに飛び込んできたのでした。

私はびっくり仰天しましたが、巻き添えを食わないように車を右サイドに止めて、ゆっくり深呼吸をしてから、車から降りて富田さんのところに向かいました。

ドライバーは双方とも、車から外に出ていました。

ぶつけた方はアラブ系の二十歳そこそこの青年でした。

アメリカで車の事故にあった場合、絶対にしてはいけないことがあります。

それは、たとえ100パーセント自分が悪くても、決して自分から、「I am sorry.」と言ってはいけないということです。