訴訟になった時に、

「お前は自分の過失を認めただろう!」

と言われて不利になるからだといわれています。

実はアメリカの多くの州に、“I am sorry法”というのがあって、不測の事故が起きた時に、加害者が悪いと感じ“I am sorry.”と口にしても、裁判においてそのことを〝罪を認めた〟証拠として採用できないというのですが、このI am sorry法(SORRY LAW)は現在アメリカの約二十州で施行されているといわれています。

しかし、アメリカ人でも知らない人が多いのです。

だから、その法律があるために、最近アメリカ人が謝るようになったのか?というと、そうでもないようなのです。

結果として、訴訟大国アメリカにおいては自分に不利になる言動はできるだけ慎むような風潮があるようです。

そのアラブ人の若者は頭を抱えたり、首を横に振ったりというジェスチャーはしても、富田さんに対して詫びるわけでもなく、富田さんも、下手に怒鳴りつけでもした日には、いきなり拳銃を抜かれる心配があるためなのか、相手の顔色をうかがいながら、無言で目を大きく見開き、唇を尖らせて、自分の車のダメージ部分をこれ見よがしに手でさすりながら、ひたすら目で相手にアピールするのみでした。

間もなく語学学校という位置だったのですが、富田さんは私に、

「私は事故の処理で時間がかかるので、先に行って、マヤさんという日本人の事務の方を訪ねて下さい」

と言うので、私はそこをあとにしてLASCに向かいました。

LASCで、マヤさんに会った私は、事情を説明して、入学の手続きを進めていました。

しばらくして、富田さんが左の後輪がパンクしたその事故車でやって来ました。

その後の状況を聞くと、事故の相手はちゃんとインシュランス(保険)に入っていたので、そのデータをお互いに交換して別れたとのことでした。

日本の一般的な対応を頭に描いていた私は、

「警察を呼ばなかったのですか?」

と聞くと、富田さんは、

「アメリカで事故を起こした場合はお互いに免許証とインシュランスのデータを交換して、あとはお互いの弁護士同士が話し合いをして解決するのが常です。事故を起こした当人同士は二度と顔を合わせることはないのです。これはたとえ相手の方が亡くなった場合でも同じです」

と、淡々と答えていました。

さすがは合理主義のアメリカのシステムだなと、私は驚きを隠せませんでした。

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