まだ終了前のゼミもあるらしく、先週ほどではないものの盛況だった。お決まりの冷やしラーメンを二つ頼んで自動販売機からグレープとオレンジジュースを買ってくる。ユミはグレープを選んだ。大きなクーラーのある壁際に向き合って座る。

「まるで付き合ってるみたいね」

ユミがこちらに少し顔を突き出すようにして声を潜めた。僕はまんざらでもないと思う。ユミは淡い黄色のレース地のワンピースにピンク、水色、黄色の三色のサンダルを履いて、髪は出会った時より少し伸びたのか後ろにキュッとまとめてある。この髪型は小さい顔によく似合っている。

「二週間近くずっと一緒だからね、付き合ってるようなものかもね」と言ってみる。ユミは黙って僕の目をそっと見た。

ユミの目は最初の喫茶店で「思いっきり遊んでみたい」と僕が嘘をついた時と同じ目。そうだ、涼やかな目だ。何も疑わない、何も信じない、そんな目だと、この時気づく。

「二人は駆け落ちしたんだと思う」とユミは言って、冷やしラーメンを一口すすった。口を動かしながらこちらを見ている。今度は上目使いの少し力のある目だ。何らかの意味が込められていると感じる。

「それ、僕にはすごくわかりにくいことなんだけど、どうしてそう思うの?」と訊いてから、僕も冷やしラーメンを一すすりする。

「あなた、本当に何も気づいてないの?」

ユミは、馬鹿じゃないの、という顔をしている。

「初日の喫茶店から二人は意気投合してたじゃないの」と言って、そう思う根拠をいくつか挙げた。中でも僕が驚いたのは二人がほぼ同時にやって来ていたということだった。

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