1│ヘルシンキグループ
ヘルシンキのデータは、ハートフォードシャーのそれをはるかに上回る優れたものでした。
新生児の諸計測、小児期全般にわたる身体計測、成人の疾病記録など、充実した経過観察記録でした。この研究でわかったことは、乳児期以降の急速な体重増加が、新たなるリスクファクターと認識されたことです。
エリクソン(Erickson)は、バーカーとの共同研究で、1934-44年に、ヘルシンキ大学病院で出生した男性4,630人について報告しています。
対象者は、乳幼児健診を受け、出生から12歳までに平均18回の身体測定を行い、1971 年時点でヘルシンキに在住している男性です。結論として、バーカーらのハートフォードシャー報告にある通り、心臓冠動脈疾患の発症に関連するのは、低出生体重児、乳児期の体重増加不良、6歳以降の急速な体重増加でありました。
さらに強調すべきは、低体重児が3歳以降に急速な体重増加を起こすのは、心臓冠動脈疾患のリスク因子であることが明らかになったことです(注4。
(注1 Lucas A. Programming by early nutrition: An experimental approach. J Nutr 1998; 128 (suppl 2): 401S-406S
(注2 Lucas A, et al. Fetal origins of adult disease- the hypothesis revisited. BMJ 1999; 319: 245-249
(注3 Singhal A, et al. Early origins of cardiovascular disease:is there a unifying hypothesis? Lancet 2004; 363: 1642-1645.
(注4 Eriksson JG, et al. Early growth and coronary heart disease in later life:longitudinal study. BMJ 2001; 322: 949-953
【前回の記事を読む】吹き荒れたバーカー仮説への批判。公衆衛生上の施策とするには検証が必要