②老年は肉体を弱くする。

老年になると体力が衰える。が、実はそれが逆にプラスに働くこともある。簡単に言えば「力み」が無くなるということ。スピーチをするにしても、若い人のように大声で元気よく話すことは困難である。しかし、いい意味で力みが消え肩の力がなくなると、静かに深く理解してもらえるような話し方ができる。それはむしろ老年が得意とするところである。

その一方で、老年期の体力の衰えは青年期の悪癖の結果であることが多い。青年期の放蕩無頼の節度のない生活がその原因となることも若い世代は理解しなければならない。

③老年はほとんど全ての快楽を奪い去る。

快楽は悪行の源となる。快楽から欲望が生まれる。そしてその欲望の誘惑は、祖国への裏切り、国家の転覆謀議、敵との密談、淫行や姦通にもつながる。

「快楽は熟慮を妨げ、理性に背き、いわば精神の眼に目隠しをして、徳と相渉ることは毫もない」この言葉は名言である。

老年から快楽が取り除かれることは、ある意味で老年が安寧とした日々を送ることができること。むしろ歓迎されることである。

④老年は死から遠く離れていない。

「人生における老年は芝居における終幕のようなもの」

人生を十分に楽しんだあとでのフィナーレ。それは老年としての果実であり、その魂とともに後世の人々の記憶に残るものとなる。

したがって、「死」とは魂をすっかり消滅させるものではなく、魂が永遠にあり続けてくれる場所に導いてくれるものととらえるべき。魂は生きている!(キケロー『老年について』P.2274 岩波書店 2004年)

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