この著書のテーマは「老年に対する4つの誤解」を取り除くことである。
「4つの誤解」とは「①老年は公の活動を遠ざける ②老年は肉体を弱くする ③老年はほとんど全ての快楽を奪い去る ④老年は死から遠く離れていない」ということである。
キケローは著書の中で「4つの誤解」について、それぞれ以下のように否定している。個人的な見解を加えながら、簡単にその内容を確認してみたい。
①老年は公の活動を遠ざける。
肉体の力、スピード、機敏さは確かに若い人にはかなわない。しかし、そうした点だけを持って老年が活動的でないと決めつけるのは早計である。
老年には若い人にはない「経験」がある。そして「思慮」「理性」「権威」「見識」がある。老年はこれらを持って大事業をなすことができる。実際に古代ローマの偉人には、こうした老年ならではの「力」でもって国を守ってきた事例も数々ある。
一方で、老年が培ってきた「力」(思慮・理性・権威・見識)は、後進の活躍の土台となっているということも事実。そうした時に、「老年は公の活動を遠ざける」というのは適切であるとは言えない。