二 アオウミガメの産卵
小笠原諸島は、アオウミガメの日本最大の繁殖地です。毎年、三月下旬頃産卵のため成熟した親亀が小笠原諸島に回遊してきます。これらの親亀は、平均で体重が約一〇〇kg近くにもなります。小笠原では、二〇〇kgを超える雌亀が捕獲されたこともあるようです。
回遊してきたアオウミガメは、三~五月頃、船で少し沖に出ると雄が上になって雌と交尾中の二匹が仲良く(?)上下に重なり、波間に漂うのを見掛けることがあります。
その後、五~八月頃に掛けて深夜、砂浜に上陸して、産卵することになります。こうした産卵時間は、約二十分(立会い時)ということもあって、なかなか、タイミング的に遭遇することは難しいようです。
テレビでは、上陸から産卵するまでの状況を一部始終、連続的に放映されますので、いとも簡単に観れるかのような期待を持ちますが、そうではありません。大塚の場合は、赴任していた際、仕事上で貴重な産卵に立ち会うことが出来ましたが、その状況をお伝えさせて頂きます。
小笠原母島沖港の外防波堤の内側には、見事な白い砂浜の「脇浜なぎさ公園」があります。この公園は、平成七(一九九五)年度から地元の強い要望に基づき、港湾整備事業(緑地等施設)として設置してきたもので、公園の一隅には「カメの産卵場」があります。
現在も、この整備事業は続いており(当時)、平成十五(二〇〇三)年度をもって一応の完成をみることとなっています。事業スタートから足掛け九年ともなり、要望された方、過去、事業に携われた方、共に大変にお疲れ様でした。
この施設を去る同年五月二八日夜、小雨の降る中でしたが念願であったアオウミガメの産卵に立ち会うことが出来ました。「産卵が始まりそうです。今すぐどうぞ!」という連絡を、知り合いから携帯電話に頂き、産卵場に一目散に駆け付けました。
正にグッドタイミング、着くと同時にカメも心得たもので産卵を始めてくれたのでした。
約二十分という短時間の中で、九六個の卵を産み落としてくれました。ピンポン玉より若干大きめでしょうか。弾力性のある真っ白な球状の卵でした。
産卵時には、よく話に聞くカメの両眼からは涙が垂れていました。これは、産卵の苦しさから泣いているのでは(?)と思われがちですがそうではないのです。
カメの餌は、エビ・ホヤ・クラゲ・海藻等を食べているようですが、これらは多くの塩分を含んでいることから、体内に溜まった余分な塩分を眼の後ろ側にある「塩類腺」という所から出しているとのことです。
塩類腺からは、海の中を泳いでいる時も、この濃い塩水が出ており、陸に上がると良く見えるので、泣いているように観えるのです。(※ 日本ウミガメ協議会)
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