第1章 自分の特徴は自分でもなかなか把握できない

新たな環境のなかで小さな気づきが増える

M君との対話(ゲノム・遺伝子・行動遺伝学)

おじいちゃんが、相対性理論で有名なアルベルト・アインシュタイン、ノイマン型コンピューターで知られるジョン・フォン・ノイマン、あるいは生体高分子の構造解析で大きな足跡を残したフレデリック・サンガーのような超一流の頭脳の持ち主でなくても、自分の能力をフルに活用してなにかにチャレンジしたとき、世の中の課題のひとつをクリアすることができるかもしれないからだ。実際、おじいちゃんの行った研究の一部はそうなったしね。

おじいちゃんは行動遺伝学者ではないので、ここまで話してきた考え方が正しいかどうかはよくわからない。でも、こう考えると、自分の人生が何となく理解できそうな気がする。

こうやって、昔のことを思い出しながら、点と点をつないでいく作業はけっこう楽しい。この年齢になってもときどき新しい発見があるからやめられないね。

これだけだと、なにを言っているのかわからないだろうから、これから、いくつか具体的な例を話してみるよ。少し話が長くなるけど、我慢してね。

M君:うーん、なんとか頑張ってみるよ……。

楽しい&つらい思い出/小学校時代 

実が、小学生のときに熱中して見ていたテレビ番組は、なんといってもイギリスで制作された『サンダーバード』だった。再放送も含め、何度も飽きずに見ていた。

これはジェフ・トレーシーによって設立された国際救助隊の知恵と勇気に満ちあふれた活躍を描いた人形劇だったが、特撮を駆使することでとても臨場感あふれるものになっていた。

特に食い入るように見ていたのが、太平洋に浮かぶトレーシー島の地下に築かれた秘密基地の内部構造だった。これをなんとか模型として再現したかったが、当時はその能力も技術もなかったので、スーパーなどの新聞広告の裏に、番組の内容を思い出しながらその秘密基地を何度も描いていた。

トータルでは200枚くらい描いただろうか、最後の頃にはだいぶ満足いくものが描けるようになっていた(当然、小学生としてではあるが)。HBの鉛筆と三角定規だけを持って、こたつで毎回3~4時間くらい作図に没頭していたので、母はとてもあきれていた。「作品」を捨ててよいものかどうか悩んだらしい。