第二章独身時代、青春を謳歌する―日本復興の熱気の中で
新しい家族と共に
長男としての責任を果たす
結婚をすると、家族を養う責任から仕事への取り組み方が変わるとよく言われるが、私も母と妹と暮らすことで、仕事への意欲も変わっていった。
こうした私の姿を上司たちも見ていてくれたのだろう。二十九歳のときに昇格し、班長になった。この年齢で班長になるのは珍しかったから、自分なりにがんばりが評価されたと感じていた。
大きな会社だから、昇格には試験や研修などもあったが、給料が六千円もアップしたのはうれしかった。当時の手取りは三万円程度だったから、かなりの昇給率である。
班長には六人ほどの部下がつき、作業の指示をするのが役割となる。現場にいるよりも事務的な作業をすることが多くなり、肉体的な負担が少なくなったのはありがたかった。
また、班長はラインが一本入ったヘルメットをかぶる。工場内だけでなく、売店に買い物に行くときや、食堂へ行くときなどもヘルメットはかぶりっぱなしだったので、ラインが入ったヘルメットは目立つ。女性事務員や他の工員たちが、このヘルメットを見て「おっ」という顔をしてくれるのだった。