転職(五十歳):大企業からベンチャーへ
世の中は変わるものである。1980年代末の原油価格暴落で、五十歳になる直前だったが会社がリストラムードになってきた。研究所などは真っ先に対象になり、研究所長も私の属していた課の課長も辞職。人員整理が始まる。
私の関心は、社内のためのシステムよりも、商品として外に売れるものを作ることに変わってきた。石油産業の将来に見切りをつける。
人員整理で失職。就職活動開始。知っている限りの知人に、只今求職活動中と伝えた。以前、画像認識のセミナーや学会で、名刺交換した程度の人にも履歴書を送った。回り回って、それが一人のヘッドハンター(人材スカウト)の目に止まる。日本や韓国・中国の技術者専門の人材発掘が専門だった。
ベンチャー企業への就職活動成功。百人ちょっとの小さな会社だったが、石油会社の時の年俸と同額出してくれたし、ストックオプションで自社株を購入する特典もつけてくれる。何よりも、半導体素子製造装置のための画像処理ソフトの開発チームが楽しい。そして、日本の支社や大口顧客訪問で日本出張もあった。
これに先立って、石油会社時代にしたことで、この転職に役に立ったことをお話ししよう。当時は、転職のことなど考えていなかったが、後から思うと私の関心の方向はどんどん変わっていたようだ。
石油会社の中央研究所では、勤務時間も事務職員は別だが、我々研究者には特に決まりはなかった。会社が奨励していたので、近くのテキサス州立大学ダラス分校の大学院の夜学コースをいくつかとった。単位を取ると、会社が授業料を出すという恩典も享受した。学習範囲はオペレーションズ・リサーチや線形計画法など。
また、会社は外部の技術講習会に参加することも奨励していて、数日の出張扱いで画像認識や画像処理などの勉強もだいぶした。このことが、ベンチャー企業に行ってから役立った。