第一章 プレイ・ボール
そして二学期が始まった。僕は朝から全く落ち着かなかった。今日こそクラスの子を誘って野球をするんだ。
でも、こういう時に限って、時間はちっとも過ぎてくれない。授業は、いつにもまして少しも頭に入ってこない。休み時間、隣の席の中田君が話しかけてきた。
「何そわそわしてんだよ」
「……」
「お前はちっともしゃべらないけど、俺たちのこと、馬鹿にしてんだろ」
「……」
「何か言えよ、バーカ」
「馬鹿になんてしてないよ。君ら放課後に野球をやっているだろう。僕も入れてほしいんだ」
「……」
「僕も野球がしたいんだ。だめかな」
「お前としゃべったのは、これが初めてだな。いいよ、いいけど野球できんのか」
「上手いかどうかはわかんないけど、僕、野球好きなんだ」
「ふーん、どこが好き?」
「ビッグ・キャッツ」
「俺はキングス」
その時、ちょうどベルが鳴り、授業が始まった。でも、僕たちはすぐに廊下に立たされてしまったんだ。野球の話をしていて、先生の話を何も聞いていなかったからだ。そして放課後になった。
中田君が校庭を駆けていく。バットを持った子、グローブを持った子、半ズボンの子、半袖の子。新学期が始まったばかりの、まだ強い日差しの中、皆が駆けていく。
ジャンケンでチームを分けて、五人ずつで三角ベースが始まった。僕はピッチャーをやらせてくれって言おうとしたけれど、例の、喉の奥に何かが詰まったような感じがして、気づくと外野に立っていた。
僕のチームのピッチャーはひどかった。ちっともストライクが入らないし、スピードもない。僕は外野で球拾いばかりさ。
点差も開く一方なんだよ。たまらず僕は
「タイム!」
と言って、ピッチャーのそばに走り寄った。
「ねえ、一人だけでいいから、僕に投げさせてよ」
「やだよ」