1章 中年期の危機
3 資産形成のための3つの投資を始める
3つ目は、高齢になってからの孤独を避けるために、家族との良好な関係、地域社会での人間関係を築くための投資です。
人生は、様々なリスクに満ちています。リスクを直視し、リスクをできる限り軽減するために、将来の自分の姿から逆算して、対策を練った投資が必要です。
持続可能なゆとりある人生に向けて、いかに自分の持っている資産を活用するのかが、大きなポイントとなります。ゆとりある人生には、心の豊かさという精神的資産、人とのつながりという人的資産、身体的・精神的・社会的健康という資産が必要です。
そしてこれらの資産を形成していくためには、経済的資産を欠かすことはできません。将来に向けた資産形成を図るということは、これらの資産をトータルで、築き上げていくことではないでしょうか。
人口減社会に現れる危機を乗り越えるために、3つの投資から人的資産と経済的資産を構築します。
2章 お金の不安
1.必要な老後資金とは
いわゆる「老後資金2,000万円不足問題」、2019年金融庁金融審議会報告書「高齢社会における資産形成・管理」が大きな関心を呼びました。
「高齢者世帯は、長寿リスクに備えるために退職金を含めた貯蓄全体を考慮しながら、貯蓄の取り崩しの範囲を決めて生活している。退職後は公的年金、および退職金を含めた現役時代の貯蓄でやりくりできている」という内容でした。
ところが、報告書の「夫婦合計の年金収入のみでは、退職後の生活費をまかなうことができていない」という点に、注目が集まりました。夫婦合計の公的年金だけでは「退職後の生活費をまかなうことができない」というマスコミの報道につながりました。
退職後の収入として「夫婦2人分の標準的な公的年金」と、退職後の支出で「65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実支出」から退職後の家計収支を確認します。
厚生労働省が公表した令和5年度の夫の老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金月額は224,482円です。夫が平均的収入(平均標準報酬[賞与含む月額換算]43.9万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯の年金額です。
主な収入が公的年金と考えられる「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の実支出は月額264,680円注です。