中年期の危機
2 鍛錬を重ね自分の得意な型を持つ
中年期の危機を明らかにし、克服すべき課題を、どう乗り越えるのかを考えるべきではないでしょうか。
もらった賃金に見合わない、付加価値を上回る賃金を受け取っている社員と、周囲から思われていないかが重要です。
若年期は、意図的に低く抑えられた賃金水準が続きました。
中年期は、働きと賃金のバランスが取れてきたので、過去に低く抑えられた分を、回収する時期がきたと考えてしまうことがあります。
こうした意識は、目標をもって、未来を志向するためには危険なことです。
AIなどの急速な進展がもたらす技術革新により、雇用環境に大きな変化が起こっています。
現場で活躍し続けるためには、職務の遂行に必要な能力の変化に適応することが、雇用を守るために必要です。
40歳前後を節目と意識し、経験を土台としつつ、必要なスキルアップを、身につけようとする視点が生まれます。
こうした視点に対応できるように、社員の自律を促し、仕事の柔軟性、自由度が高い、やらされ感の低い環境が必要です。
企業内の人材の新陳代謝を目指す「40歳定年制」注の発想は、自律してスキルアップを実現する方法をはっきりさせる考え方です。
安定成長社会では、均質な知識や行動を身につけて、指示された内容の仕事を、要求された品質で提供できる人材が重宝されました。
人口減社会の進展で、国内需要が減少し、成長期待が小さくなる環境では、企業が求める人材が様変わりしています。
AIやロボットの登場で、企業任せのキャリア形成から、キャリアを自らの力で切り開く能力が必要となっています。
ジョブ型雇用では、より良い労働条件で働くために、自営業に通じる働き方である専門職化、技術職化が生じています。
自営業的な専門職化、技術職化から生じる、企業から独立したものの見方や姿勢が、キャリア選択の自律への重要な役割を果たします。
中年期には、いったん立ち止まって自分の能力や経験を、棚卸ししてみるべきです。
会社人間というスーツを脱ぎ捨てて、使えないスキルを捨て去り、使えるスキルを見極めて自分の素の姿をみつけ出すことです。