はじめに

日本では、金利が失われてから20年以上がすぎました。安定成長期には、5%から6%の利回りで、マル優・特別マル優・郵貯マル優の非課税制度で、複利運用できた時代がありました。

退職金を原資に、受け取ることのできる確定給付企業年金では、期間を定めない給付利率5.5%の固定金利で終身受給できました。

このような安定成長期は過去のものとなり、経験したことのない人口減社会の進展から、社会的・経済的な課題が深刻化しています。人口減社会の進展で、国内需要が減少し、成長期待が小さくなるにつれて、日本を投資先として考える場合の魅力が低下しています。

働き手を取り巻く環境は、テレワークやオンライン化などの仕事のデジタル化、ジョブ型雇用、リスキリングへと変わりました。緊張感のあるジョブ型雇用に近い発想で、従来以上に専門性が求められています。自らの得意とする分野であっても、課題を深掘りして判断力を鍛えることができるキャリアの選択を考えます。

旧来の産業分野の仕事も常に変化し、高度化しています。会社に行けば自然と仕事を覚え、社員がキャリアアップしていくような、丁寧な対応が期待できた時代は、過去のものとなりました。

サラリーマン社会は大きく変化し、これまでの意識では、持続可能なゆとりあるシニアライフを実現できません。お金・暮らし方・働き方にまつわる危機に、どう対処していくかが課題となっています。

中年期のライフサイクルに現れる危機と、課題を克服するための準備が重要となりました。中年期に現れる危機と、正しく向き合うことは、気づかないでいた自分の未知の姿と出会うことになります。

「今、やらなくてはいけないことは何か」、「将来にわたりやるべきことは何か」を明らかにする必要があります。

岸田首相は、貯蓄から資産形成への移行を促し、個人の投資による資産所得の倍増を実現するとしています。人への投資の一環で、資産形成を支援し、企業価値向上の恩恵が、家計に及ぶ好循環を目指しています。

私は、日本証券業協会の金融・証券インストラクターとして、投資の初心者向けに金融・証券教育支援活動の講師を務めました。最低限、身につけるべき金融知識、および金融経済事情の理解と、適切な金融商品の利用選択の普及活動に従事してまいりました。

そうした啓発活動から、これから我々を襲う、せまりくる危機へ立ち向かう準備が不足していると感じました。これまで金融・証券インストラクターを務めた経験から、人口減社会の資産運用について考察しました。

人口減社会の危機に立ち向かう準備に、まさに、取り組もうと考えているような人に、ぜひ、一緒に考えてもらいたいと思います。