幸せの肉体的メカニズム
幸せを感じるためには幸せホルモン分泌が鍵になり、幸せホルモンは交感神経と副交感神経のバランスを整える
幸せや幸福感を感じる上で欠かせない体内物質が、幸せホルモンと呼ばれるドーパミン、オキシトシン、セロトニン、エンドルフィンなどです(樺沢紫苑著「最新科学から最高の人生をつくる方法 精神科医が見つけた 3つの幸福」[飛鳥新社、2021年]より引用)。
つまり、脳内で幸せホルモンが出た状態が幸せであり、幸せを感じるには幸せホルモンの分泌が鍵となります。ホルモンとは内分泌腺と呼ばれる組織から分泌される物質で、血液の中に入り、全身に送られます。
パーキンソン病(骨格筋の運動が低下し、緊張が高まる神経系疾患)の患者で産生が減少するドーパミンは、心臓がドキドキするような高揚を伴う幸福感の作用があります。
お酒で楽しい気分になるのは、お酒を飲むと、ドーパミンが分泌されるからです。オキシトシンは子宮や乳腺に働きかけ出産時の陣痛を起こすホルモンですが、精神的な作用もあるようで、不安いっぱいの子どもが母親に抱きしめられると落ち着くのはオキシトシンが分泌されるからです。
胃腸の細胞が分泌するセロトニンは下痢や嘔吐を起こすホルモンですが、脳内では精神を安定させる作用があるようです。早朝に散歩をして清々しい気持ちになるのはセロトニンの分泌が促されるからであり、ある種のうつ病では脳内のセロトニンが減少します。
エンドルフィンはモルヒネ様の鎮痛作用を示し、マラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用(ランナーズハイ)はエンドルフィンの分泌によるようです。
これらのホルモンは自律神経のバランス調節に重要な役割を果たします。故安保徹名誉教授(新潟大学)によると、病気の7割は交感神経緊張、3割は副交感神経緊張で起こります。健康な体には交感神経と副交感神経のバランスが重要なのです(「にいがた しらぎく 38号」[新潟白菊会、新潟大学医学部・歯学部、2010年]より引用)。
無理をしすぎたり、疲れがたまったままだったり、寝不足が続いたり、悩みや心配事を長く抱えていたり、時には、強いプレッシャーの中で我慢を強いられていたりして、いつまでもストレスが解消されないままだとそれまで順調だった人が体調を崩し始め、そこから、病気が引き起こされます。
では、交感神経、副交感神経とはいったいどういう機能を持っているでしょうか。