まえがき

本書の主な構成は、以下の通りです。

・改善を進める前に「動機」「基礎」「当たり前」を揺るぎないものにする。

・「問題点を見つけて1つひとつ改善」のクセをつける、習慣にする。

・問題点が見つけ難くなってきたら、「工夫」「仕組み」で見つけやすくする。

・分相応の仕組みを使う。間違っても「方法が目的」にならないようにする。

・管理者が振る舞い方を身に付ける。

いずれも「自らの失敗体験をどのように挽回したか」を主眼にして記載しています。読者の皆さんが自分自身の体験との比較によって何らかのヒントを掴み、自身の進化に結び付けていただくことを願っています。

トヨタ自動車の社員の方々と一緒に仕事をさせていただいたり、指導を受けたりしてきて思うのは、我々とは「1人ひとりの力の差」が大きいことです。すなわち、入社前には学校を中心とした似たような経験をしているにもかかわらず、「誰でもが当たり前に考え、行動する」といった企業体質、伝統が、トヨタ自動車と他の組織とは違いすぎるのです。

これを備えない限り、トヨタ生産方式をトヨタ自動車で経験した人と同じようにすんなりと導入して自分のものにすることは至難の業です。トヨタ自動車内部の方々には、「そんなこと当たり前、他社はそんなこともできていないの?」と言われそうですが、国内で外国人を抱えたり、海外で仕事への取り組み姿勢が異なる人々に力になってもらったりするためには、ここのギャップを意識して取り組むことが必要です。

そこで本書では、部品メーカーの立場、弱い体質の中で1人ひとりの作業員に「腹に落としてもらう」ためにどのような言い方、振る舞い方をするのかをポイントにしました。

基本的には、「トヨタ生産方式(TPS)」を実践しているつもりですが、随所でレベルダウンしたり、派生したり、管理者の基本姿勢にタッチしたりと、TPSとは言いにくい内容となっています。そこで、製造、モノづくりの競争力アップのための継続的な改善=「エンドレス改善」と言い換えてみたわけです。

「エンドレスな改善」を目指した取り組みを紹介することが、それを牽引する工場管理者、会社経営者の方の、明日への活動のヒントになれば幸いです。