タイガーは妹のラニーに懐き、フレイジャーは弟のリチャードといつも一緒にいる。ホーレン種は人間を主人として仕えると、忠実な部下となり、しもべとなって一生をともにする。

雌犬は一度子供を産むと二度と出産することはない。ホーレン種の犬は天竺の野生に潜む人喰い虎さえも恐れる強さを持っていた。

「腹が減ったな、ジュピター」ユージンがジュピターを見てそう言った。「森の中に行って何か食べ物を探しにいこう」そう言ってユージンが玄関に向かって歩き出した。ジュピターは尾を振ると、すぐ彼の横についた。

ユージンは背中に剣を背負って家を出た。外はすっかり明るくなっていた。

森にむかう途中の道のあちこちには昨日の盗賊達の襲撃の跡が生々しく残っていた。深い傷を負った村の男達がまだあちこちでうめいていた。村人達が懸命に彼らの傷の手当をしていた。

盗賊達に連れていかれずに済んだ女達は、傷ついた夫や男たちの傍で彼らの傷の手当をしていた。

帰らぬ人となった父親の上で泣き伏せる子供達など家族の姿があった。火を放たれ燃え落ちてしまった多くの家からは一日経った今も煙がくすぶり、焦げた臭いが漂っていた。村全体がまるで餓えた狼に食い散らかされたように見えた。

「平和な村のすべてをめちゃくちゃにして去って行った蛮族の仕業を許すまい」ユージンは深い怒りを覚えながら決意し、村人達を気遣った。

村の集落を抜けると何もなかったかのように静かな野原が広がっていた。昇ったばかりの朝の太陽が輝いていた。ユージンとジュピターは野原の真ん中をまっすぐ伸びていた道を進んだ。

【前回の記事を読む】平和だった村はまさに地獄と化した…略奪兵達の恐ろしい所業