私は入学後周囲に依頼されて、家庭教師を何件かしました。自分のこれまでの高校生としての経験を活かして、勉強方法や大学受験勉強の要点を教えることができます。たいていは大学受験生でしたが、ほとんど皆希望する大学学部に合格をしてくれ、本人はもちろん、ご両親に大変感謝されました。

料亭の長男の面倒をみたこともあります。厳しい学習の中で、自分には不向きだと察したようで、勉強の途中でやめました。残念でしたが、それも人生の道かと思い、私もそれ以上強くは進学を勧めませんでした。ただその料亭ではおいしいごちそうをしていただいたことが、今でも印象に残っています。

他方、ファーストフードのお店で、アルバイトをしたこともあります。その頃、オートバイに乗っていたこともあり、夜遅くまで仕事ができるということで、お店には重宝されていました。そこでは商売のたいへんさ、面白さを体験できました。

何よりよかったのは、自分のこれまでの社会とは全く異なる、いろいろなアルバイト仲間とお付き合いできたことです。毎月もらうバイト料は、その後皆と飲み会に行ってしまい、ほとんど残りませんでした。

でも彼らとの付き合いは、その後自分自身にとって貴重な財産となりました。もちろんそのアルバイトは、医学実習の始まる多忙になった時期には辞めました。

ただ医者になった後も、世の中にいろいろな社会的立場の人がいることを理解するのに、このアルバイトでの経験は役立っています。

学生時代に種々のボランティア活動をすることも、大いに推奨したいものの一つです。米国の大学進学の際に、高校生時代のボランティア活動の有無や内容が、話題となるようです。

確かにキリスト教精神の強い米国ならではの考え方でしょう。日本の大学入試の面接試験の際に、ボランティア活動について尋ねてみたことがあります。あいにく受験勉強の厳しい日本の多くの高校にあっては、ボランティアに費やす時間をとることがむつかしいでしょう。

高校によっては、ボランティア活動を学校ぐるみで推奨しているところもあるようです。でもボランティアは、あくまで個人の前向きな姿勢です。集団で強制するものではない、と思います。

ただ学校ぐるみで実施することで、そのボランティア精神が、ひとりひとりに植えられるならうれしいことです。