当院では他にあまりみられない考え方をもとに生活指導を行っています。その源が目標達成シートです。夜間頻尿を構成する要素は常識的に排尿蓄尿症状、夜間尿量、睡眠の3つの因子ですが、その他に代謝、高齢者生体機能、夜間多尿、睡眠パターン、生活習慣の生体機能に関係する5つの背景因子を加え、目標達成シート(曼荼羅まんだらシート)を作成しました。

合計8つの因子のそれぞれに8つのキーワードを配置して夜間頻尿の改善の方向性と関連性を浮き彫りにできるように病的因子だけでなく生理的諸現象の背景を取り入れました。それは、夜間頻尿をわかりやすく俯瞰(ふかん)できる効果があります。

各項目のデータをつなぎ合わせて生活指導を行い、当院の学会発表、自由研究の臨床データも混ぜて説明し、治療方針と生活指導の流れについても説明します。

学問的には、夜間頻尿ガイドラインの中に行動療法が生活指導として記載してあります。

しかし、これは大きな壁ではありますが、内容は論文の集合的な生活指導のように感じ、生体機能を加味した総合的な生活指導ではないと思います。当院では治療に付随して一歩はみ出し、目標達成シートに従った生活全般の総合的な生活指導を積極的に行っています。

代謝を上げると効果が上がる理由として避けて通れない問題で、抗利尿ホルモンがどのように関与しているのかについて触れなければならないと思います。そして、夜間頻尿のもう一つの不可解、不確定な問題点として、中途覚醒が原因となるトイレ行動をいかに減らすか、についても挑戦しなければならないと思います。

これを本にして現在の考え方、診療内容をまとめて夜間頻尿の正体に迫る工程表を示しました。内容が独りよがりと思われようが、日々診療で患者さんと話し合ってそれについて検証を続けていますので、確かな手応えを感じています。

夜間尿量と睡眠に関する当院の生活指導の骨子は、季節に適応して運動や入浴で代謝を上げて入眠し、深部体温の十分な下降で深い睡眠を少しでも長く取得して中途覚醒や尿量を減らすことを主体にしています。

その根拠として代謝、体温調節、血液移動と血液配分、熱放散、深部体温、睡眠パターン、季節的変化などの知見データを連携させた考察にあると思います。さらに、この関連性が抗利尿ホルモンの分泌に対していかに関与しているのかを検討する価値があると思います。

そして、老人の生体機能的特徴、季節的変化をカバーできるのは、代謝を上げる習慣を作り、血液移動を起こして深い睡眠を獲得することだと思います。このような知見は、「環境温度の生理学」「体温生理学」「運動の生理学」の中からも引き出されており、睡眠と共に夜間頻尿に深く関連していることに後で気づきました。