ちなみに、張形は「御養(ごよう)の物」とも呼ばれ、自慰であろうと気をやれば「血気めぐる」から健康に益するとの説明が『養生訓(ようじょうくん)』にある。

牢主が取り出した「互い形」は鼈甲(べっこう)で拵(こしら)えられ、鍔(つば)で根元が一つに繋ぎ合わされていて、その二つの陰茎は誠に荘厳で牛の角のごとく左右に反り、支えきれずにウネウネと揺らめいている。

大きく張り出したその鰓(えら)たるや巨大なキノコを思いおこし、色浅黒く中央には念のいったことに、鈴口までもが設けられており、更にはその猛々しい男茎の表面を覆う幾筋もの血管には赤黒いミミズばれを浮き上がらせている。

女囚の喉がビクリと騒いだ。

(なんと、これはお殿様以上のお姿ではないか!)

妖臭を放ちながら縮緬模様に可愛くすぼまった裏門の入り口が、暗い灯を浴びてあらわになって、政子の眼前でヒクヒクと息づいている。

牢主は白桃色の露出された紅い菊座に「女悦丸(にょえつがん)」をたっぷりと塗り込みながら、張形の先端で、灼熱と化した洞窟の周囲をヌメヌメと遊ばせてみる。

(なかなかに柔らかそうな菊門を持っていやる、これならば裏の御門は殿のお手はまだのようじゃ)

陰汁まみれで小さくすぼまった裏門の入口が暗い灯を浴びて更にあらわになった。

【前回の記事を読む】欲情した女というものは何と美しいのか・・・政子の中に沸いてきた亀の前へ憐憫と愛情