刑事狩り

角田は煙草を灰皿に押し付け、二本目を吸い出した。

「生活安全部ですか。確かにストーカーや虐待等の事件は生活安全部の担当、そこに事件に強い刑事を加えれば、生安部のレベルアップにはつながると思いますが、刑事部が納得するかどうか」

「いちいち連中の意見を聞いている暇はない。こうしているうちにも、どこかでストーカー被害や虐待被害に遭っている者がいる。今すぐ改革が必要なんだ」

「はい。その通りです」佐伯は頭を下げた。

「そこでだ。お前にその下地を作ってほしい。これから私は県警の全署の改革を進めていく。その先鋒をお前に任せたい」角田は佐伯に顔を近づけた。

「本部長のお考えはよくわかりました。しかし、県警全署の改革となると、規模が大きすぎます。

私のようなものがお役に立てるかどうか」

佐伯が困惑した表情で角田を見つめていると、角田は再び人懐っこい笑顔を見せた。

「真に必要な刑事を選別してほしい。そして必要のない刑事は排除する。簡単なことだ」

      *

令和四年二月、俺は角田本部長の特命を受けてこの本宮署に刑事課長として着任した。この刑事課は、課長も含めて警部以下四五名と大所帯で、うち女性警察官が八名いる。女性の職域拡大という、時代に即した配置だ。

「本日付けで当課に着任しました佐伯です。刑事課は初めて経験する課でもあり、私のようなものが刑事課長という大役を果たせるのかどうかわかりませんが、全身全霊をもって仕事にまい進していきますのでご協力お願いします」

今日は俺の着任挨拶だというのに、課員はまばらだ。

「課長補佐の城島と申します。よろしくお願いします。私も若い時は人事一課におりまして。もう一〇年以上前の話ですが」