刑事狩り
「補佐、もうちょっと様子を見た方がいいですよ。下校途中でしょ? まだ友達と遊んでるんでしょ」
途中で強行犯捜査係長の加藤が口を挟む。
「補佐、いなくなってからどれくらい経っている?」
「はい、学校が終わったのが午後四時位ですから、すでに二時間以上は経過しているかと思われます」
「行方不明者の扱いは生活安全課の仕事でしょ? こっちは事件で忙しいんだからこれくらい生安でやってほしいよ」
他の刑事が文句を言い出す。
「子供の行方不明事案は誘拐等の事件に発展するおそれがある重要事案だ。ここは事件を念頭に立ち上がった方がいい。補佐、訴え出た母親はまだ交番にいるのか?」
佐伯がすかさず刑事達の不満を一蹴し、城島に確認する。
「はい、交番で行方不明届を出しているところだと思います」
「よし、では母親には届出を出したら家に帰るよう伝えろ。うちの捜査員を秘匿で家に向かわせる」
佐伯が指示を飛ばす。
「了解しました」
城島は交番に連絡しその旨を伝えた。
「じゃあ加藤係長、家に行って母親から事情聴取してきてくれ。あれっ? 係長はどこ行った?」城島が辺りを見回す。
「係長なら裏付け捜査があるとかで現場に出ましたよ」
同じ強行犯捜査係の手塚が自席でパソコンを打ちながら答える。
「裏付けだと? たった今ここにいたじゃないか。今すぐこの子の家に転進するよう加藤に伝えろ!」
城島から檄が飛んだが、手塚はパソコンに向かって淡々と打ち込み作業を続ける。
「おい手塚! 聞いてるのか!」
「聞いてますよ。うちの係もホント忙しくて猫の手も借りたいくらいなんですよ。生安の仕事まで手を出せませんよ」
手塚は城島の顔すら見ず、ひたすら打ち込み作業を続ける。
「君、手塚君っていうのか。ちょっとこっちまで来てもらっていいか」
手塚は作業を止め、面倒臭そうな顔をして佐伯の所まで来た。
「君、階級は?」
「巡査部長です」
「そうか。では手塚部長、今補佐が言ったことはお願いではない。命令だ。今すぐ加藤係長に電話をして家に転進するよう伝えろ」
「わかりました」
手塚は自席に戻りながら携帯電話を取り出し加藤に電話をかけた。
「課長、初日からすいません。私はこれから生安課に行って事情を説明してきます」
城島は急いで刑事課を出て行った。