しかしここはどうなっているんだ。巡査部長ごときが警部に楯突くとは。佐伯はイライラしながら自席に戻り、捜査一課に電話をかけた。
「課長、生安には連絡済みです。加藤には連絡とれたか?」
城島が手塚の方を向いた。
「電話しました、了解だそうです」
「よし、これで万が一の時の体制は取れましたね」
「念のため一課の特殊には連絡した。係長以下三名でこっちに向かうそうだ」
「一課が来るんですか! そりゃ大変だ。色々と準備しなくては」
「何の準備だ? 部屋は三階の対策室をすでに押さえたぞ」
「部屋もそうなんですが、ほら、晩飯の用意とかもしないと」
「あのな、彼らはここに遊びに来るんじゃないんだぞ。本部の人間が署を助けるのは当たり前じゃないか。なんでこっちが晩飯の心配をしなけりゃならないんだ」
「しかし課長、一課の連中に嫌われると、後々の仕事がやりにくくなりますし」
「お前はそんなことばかり考えているのか? そんな事考える暇があったら、いなくなった女の子の心配でもしろ!」
佐伯は城島を恫喝した。
「す、すいません!」
「城島、警察犬の要請をしろ。いなくなってから二時間経過しているから犬でも追い切れないかもしれないが、できることは全部やるぞ」
「了解しました」
城島は慌てて警察犬係に電話した。捜査一課特殊犯が署に到着した頃、警察犬はすでに追跡を開始していた。
「特殊犯捜査係の池上です」
「課長の佐伯です」
「それで捜査状況は?」
佐伯はホワイトボードに記載された事項について説明した。
「ご両親に対する怨恨の線や資産関係については一班が、いなくなった女の子の友達関係は二班、他は警察犬を要請してすでに捜索を開始しています」
「了解、では我々は秘匿でその子の家に入りますから、我々が家に入った段階で署の人は離脱してください。被害者対策はうちらでやります」
「了解」
特殊犯捜査係員が現場に向かってから数分もしないうちに捜査員から声が上がった。
「課長! 犬がマンションの非常階段で隠れていた女の子を発見しました!」
「女の子は無事なのか!」
「今、警察犬係員が確保してます。無事だそうです!」
「城島! 現場に行くぞ!」
「はい!」
佐伯は城島とともに発見現場に飛んだ。