【前回の記事を読む】古代中国。再婚した父と義母は弟を愛し、舜を殺そうとしていた。そんな家族に彼がとった行動とは。

第一章

支那史(しなし)

二十四孝(にじゅうしこう)説苑(ぜいえん)

【10】「閔損(びんそん)

春秋時代(紀元前数百年前)の頃のお話です。

()の国の閔損は早くに母を喪ってしまいました。

父は後妻を迎えてから、母は二人の子供を生みました。

その二人の子が着る服は暖かな綿が入っており、(そん)が着る服は、いつも薄手の物です。

父が冬の寒い月の日に、損と馬車で出掛かけました。

損は体が寒えて車を引く綱を落として失くしてしまいました。父は、これを責めますが、損は何も言い訳をしません。

その後、父は、その理由に気付き、妻と別れることを望みました。

その時、損は父に言います。

「母がいれば一人の子が寒いだけです。もし、母が去れば三人の子が寒くなります」  

父は、その言葉に心を打たれて別れることを止めました。

また、母も悔い改めてから三人の子に対して等しく接するようになり、ついには慈愛の深い母となりました。